×アルバーン戦記〜4つの月〜 オヴェリアの章‐5‐ 「ったく。お前があんな呪いにかかってたせいで足止めもくらったし!服の染みは取れにくいし!女に告白されるし!!」 後頭部からおろした白い布をもしゃくりながら、不自然な黒髪をした少年はがなっていた。 「オイ。あそこで俺が呪われなかったら『神剣キグナス』も戻ってこなかったって事を忘れんなよ。」 新緑のような緑色の髪をした色白の青年は淡々と喋った。 やたら奇麗で、絵になる美形二人は、つい小一時間前森に囲まれ、辺りより気温の数度高いジルミット帝国に入った。森の中は日陰もおおいせいで涼しかったのに、日の当たる町中に出た途端のこの暑さは二人の神経を逆撫でし、苛々させた。 普段口数の少ない青年が、多弁になっているのはきっとその苛々の所為だろう。 「大体自分の都合で『神剣』取り出した挙げ句、俺の『本』まで血で真っ黒にしやがって…」 「どォせ『神子』様のお力で守られているんだからいいだろ。服の染みなんて何回洗い直したと思っていんのさ!」 黒髪の少年はもう少し毒を吐こうとしたのだろう。緑髪の青年が、その歩みを止めるまでは… 青年は緑の美しい眼を大きく見開いて,呆然と呟いた。 「……あれ…ウィルハじゃないか…?」 中世ヨーロッパにおいては、よく見られた風景だ。広場の中央には高台が備えられており、その後ろには頑丈に作られた黒いオリ。 その中には、何処にあってもよく目立つ深い紅の色をした髪を持つ、見慣れた端整な顔があった。 ×NEXT× 著者・猫野土笛様の日記HPヘ |