× アルバーン戦記〜真実の騎士達〜番外編 偉大なる暇人×


「――暇、だわね」

 ここはアルガネス王国。

 バーン大陸の最北・・・アルバーンの上に位置する大国。
 魔法技術に優れ、代々王神子が治めている神子治国のアルガネスは、大陸1・2を争う大国だ。

「アルバーンを攻めるのは、まだ機ではないし。暇だわ・・・」

 そのアルガネスの王宮で、一人溜息をつくのはアルガネス王国の”眠らずの王”――氷統(ひとう)女王その人であった。
 
「何か面白いこと、なーいかーしらー」

 氷統は外見的には12そこらだが、王神子になったことにより不老不死となり、成長も止まっている。
 ので、見た目は子供でも中身は今年で28になる立派な大人である。

 その上、アルガネス国王でもあり、王神子でもあるのだから、「暇だわ」発言はいささか不似合いだが、12歳のときより好きなだけ永遠の時を約束された者にとっては、何もかもが暇に思えるのだろう。

「あー暇だ暇だ」

 先ほどから”暇”を連呼する氷統に、一人の男が目に止まった。

 アルガネス最強の召喚士団の団長、上条沙々良(かみじょうささら)である。

 東大国出身なのだが、本人曰くハーフらしく、目も髪も黒くなくない。
 その上、右目に眼帯をしており、体のところどころに傷跡をもつ、なんともミステリアスな男だ。

 氷統が王になってすぐに、仕官してきたのを氷統が採用し、かれこれもうそれは10年以上のつきあいになる。

 その沙々良は、忙しげに魔法騎士団長と打ち合わせをしていた。

沙々良(ささら)のその傷って、いつできたものなの?」

「何ですか、いきなり」

 アルガネス魔法兵団の団長を打ち合わせをしていた沙々良は、いきなりの御指名に眉根を寄せる。

「暇なのよ。話し相手になりなさい。王様の命令よ。」

 沙々良は暇潰しに王様の命令を使うな、と、喉まで言葉がでかかったが、寸でのところでその言葉を飲み込む。
 王様の命令とあっては逆らうわけにもいかず、沙々良はさっきまで打ち合わせをしていた者に帰るように促す。

「・・・で、何の話でしたでしょうか。」

「傷よ、傷。あなたのその体中にある傷、いつからあるの?」

 あからさまに迷惑を顔に出した沙々良だが、それを気にも留めず、氷統はしゃべりだす。

「いつから、と申されましても・・・」

「あなたがアルガネスに来たときにはもう傷だらけだったじゃない。」

 珠姫を連れ、アルガネス王宮に仕官してきたときにはもう、右目の眼帯はあったし、体中の傷もあった。
 今と違うところといえば、若さと髪の長さ、そして服装くらいだ。

「確か、珠姫(たまき)を守ったときについた傷、だったっけ」

 氷統は黙って壁にもたれている紅色の眼の少年へと視線を向ける。
 珠姫は自分の事が会話にでているにもかかわらず、いつもどうり興味無さげに黙っている。

 珠姫はいつも沙々良に寄り添うように存在するが、何事にも無関心のようで、人前で話すことは早々なかった。

「そうです。だからまぁ、戦いの時についた傷、ですね」

 さっきまで打ち合わせに使っていた資料に目を通しながら、沙々良が答える。

 が、そこで、そこまで黙って話を聞いていた珠姫が、不意に口をひらいた。

「・・・沙々良、全裸で戦ってたの?」

「はぃ?」

 珠姫のそのいきなりな発言が理解できず、沙々良は思わず素っ頓狂な声をあげた。

 意見を求めているわけでもなく、かなり無口な珠姫が自分からしゃべりだすのも珍しいことだ。

「だってさ、足の付け根のところにもついてるじゃん。かなりキワドイ場所に」
「珠姫!!」

 珍しく口出しし、淡々と傷について語ろうとした珠姫を沙々良が急いで口を塞ぐ。
 が、そこまで聞いてわからないほど氷統も鈍感ではない。

 二人は”キワドイ場所にある傷”も見れるような関係なのだ。

 場に流れる冷えた空気。

「・・・まぁ前から怪しいとは思っていたけど、まさか本当にそーゆー関係だったとはねぇ・・・」

 氷統はじろじろと沙々良と珠姫を見つめる。
 沙々良は別に珠姫と自分の関係を周囲に隠していたわけではないが、自分の使える主君に、しかも仕事中にそういう話をされると、さすがに恥ずかしい。

「・・・」 

 嫌な空気だが、この部屋にいる3人の中で居心地が悪いと思っているのはどうも自分だけらしい。

「個人の趣味だから?私も別にとやかくは言う気はないけれど。」

「・・・」

「・・・非生産的なカップルね・・・」

 ふぅ、と大きな溜息を一つ。

 流れる長い沈黙。

――これは、一種のセクハラなのだろうか――

泣きたい気持ちになりながらも、呆然とそう思う沙々良であった。


・・・どの国も、王に仕える者は苦労者が多いらしい



アルガネス王国のお話です。
アルガネス王国、眠らずの王・氷統と召喚士団長・上条沙々良、そして紅の血の風・珠姫です。
もっとシリアスな方々なのですが、短編で書くと、なんとなくギャグになってしまいました。
ちなみにこれは真実の騎士達オープニングのルイス王死去寸前くらいです。
この3人には色んなエピソードがあるのですが、アルバーンの人々がやっぱり中心なので、書けないと思うので、ちょこちょこ短編で書けたら良いなと思います。
・・・ほんとに王に仕える人はみんな、苦労性ですね・・・

2004.03.26 おまめん