×アルバーン戦記〜4つの月〜 ウィルハの章‐4‐

「晩飯やでー。」

 クオさんだ。どうやら、食事・台所管理がクオさん。着る物の管理は翼。全体責任・子供のカウンセリングが暁姫。なんかどこか間違ってる気もしたが、本人たちがそれでいいなら由としよう。

 クオさんの合図で子供が広間に集まった。20人ほど。どこにいたんだこんなに。

「あかい人がいる。」

 赤い人。オレか。怪人赤マントなんて怪談があったなぁ。など考えつつ。

「ウィルって呼んでくれ。」

 とりあえず挨拶挨拶。

「ぼく、バランス。よろしく。」

 ・・・秀才肌っぽいな。片足のない子と同じくらいだ。

「あっちの二人が一番上。サイネリアとふふう。」

「ふふう?」

 奇妙な響きに聞き返してしまった。

「アズマってくにの子なんだって。風がふくってかくらしい。ぼく、かんじはまだ苦手。」

 オレあんたくらいの年には自分の名前書くのが精一杯だったよ。

「一番下はハリーだよ。こないだ入り口にすてられてた。」

 捨て・・・っ。

「ホントだよ。服きてなかったし、息してなかったのに、暁姫がたすけた。」

「死んでたのか?」

「いきてるよ。」

「えっと。」

 つまり、ほっときゃ餓死とか凍死とか野犬の餌食とか三日くらいで土に戻りそうだった奴を、暁姫は、心配蘇生法とかで救ったと。見かけは子供、頭脳は大人か。

 そもそも、あんな少女が気まぐれに弾圧受けてる教会に出入りするか?神父を『あの馬鹿』と呼ぶか?クオさんと翼も気になる。まさか二人の子供という落ちはないだろう・・・。そう、なんとなく、暁姫は二人の目上のような感じがするのだ。『私のもの』発言や、俺を洗濯に借り出す際、翼が暁姫に許可を求めたこと。考えれば考えるほど、違和感は増す。

「これ、おっさんの分。」

「おっさ・・・!」

 黒髪のやさぐれた感じの少年が、俺の前に、木製トレイをよこした。まだそんなに年をとった覚えはない。

「遠慮せずに食え。今日の礼だ。」

 暁姫が向こうのほうから叫ぶ。遠慮はせずに食わしてもらうが・・・。こう、周りで子供が祈ってるのに、一人さくさく食うわけにはいかんだろう。『三人の父に感謝し』とか朗々と言ってる。

 それぞれの年齢、体型にあった炭水化物中心。というか、ぶっちゃけ小麦粉から作ったパンと山羊の乳。これがここの生活状況。寒いものだ。

「兄さん、たりんやろうけど、堪忍したって?」

 堪忍しますとも。しかし、聞いておくべきだ。

「その・・・毎日これだけで・・・?」

「うん。この子ら育ってんの奇跡みたいや。」

 クオさんは苦笑する。

「赤ん坊はなぁ、近所のお母さんに母乳もろうてんけど、やっぱ憲兵さんは皆怖いしな。うちがその立場でもそうするわ。」

 俯き加減でそう語ると、一部の子供が、パンを取ったかとられたかで騒ぎ出した子供の方へ、向かっていった。

 俺は少し、昔を思い出したのかもしれなかった。






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