×アルバーン戦記〜4つの月〜 オヴェリアの章‐3‐


 ネレイドは,神聖動物である。.
 丸いからだに尖った大きな耳、真っ白な体に赤いおおきなめ(こいつは目が緑なのだが)、体長は大体二〇センチ程度だが、今までで一番大きなものでは一.五メートルのものが発見されている。


「う…ッるさい…よ。」

 結局オヴェリアは睡眠時間を延ばすことは出来ず、朝食に降りていくことになる。

「なぁ、別の皿に移してくんねー?」
「なんで?」
「食えねぇンだよ!今こんな姿だからっ!!」

『今』。
 実は彼、いつもは人間である。否、人間が本来の姿だ。今は白いからだだが。普段は青と茶で縁取りされたアイボリーの服。緑の髪と、アイスブルーの瞳を持った知の『神子』だ。『神子』とは、血や、才能の中に混ぜられた情報により、魔力や神力が行使できる者の事であり、『血の神子』エルバトランと『運命の神子』花城を代表とする。

「オヴェリアさん!おはようございます!!」
「オハヨ」

 …

「ええ…ッと…?」
「アニタです!!」

 その少女はオヴェリアの科白の後、間髪入れず熱のこもった声で答えた。茶色い髪をした青い服の少女の挨拶に、オヴェリアはそっけなく答えた。

「どうしたんですか,もう十時ですよ?」

 一つもテンポを乱さずしゃべる彼女に、少し鬱陶しさを感じながらも、常に眉一つ動かさないのはオヴェリアならではの特技である。過去に国の首長に近い位置にいた経歴のある彼女には、微塵ほどの苦労でこんな事が出来るのだ。(氏より育ちという。)

「あ!そうそう。私早起きして、お弁当作ったんです。もらって頂けますか!?」
「お、俺に…?」

 普段の彼女は男だと偽っているので、外ではこの喋りだ。163センチの妙に恵まれた長身が役に立つ。

「今日、ダイスの森に入るんでしょう?」
「あ・ああ…」


 そう、本日彼女がすべき事は、ここにいる神聖動物、ネレイドを一応仲間の本来の形である人型に戻すことだ。

―――昨日、街を歩いている時だ。
 その街は砂漠の中にあり、そのくせ、常に低気圧が通り過ぎたあとのような気候の所為でで明るさと太陽の角度の割に涼しかった。辺りの人間のほとんどはターヴァンや、ヴェールで頭や顔を覆ってはいたが嫌な感じもせず、なかなか住めた街である。
 そんな町を徘徊していたころだ。続く石畳の道にビニールシートをひいただけの即席、いわゆる露店の店主に声をかけられたのだ。
 そこの露店の隅においてあった鳥篭の中にそいつはいた。
 その瞬間は、彼女は爆笑の渦に投げ込まれたが、事がそう単純でない事を悟ったのはその直後だった。
 占い師の話によると、それは呪いであって、その呪いを解くにはダイスの森の魔物の血を振り掛けるしかないという事が聞けた。

 そしてとどめの一言であった。

「私もつれてって下さい!あの森についてはその辺の人よりずっと知っていますから!!」
「あ、ああ。そ。」



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